探求三昧(はてな支部) - 地震前兆/超常現象研究家・百瀬直也が地震・災害予知・防災・予言などを探求

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天使と悪魔(ダン・ブラウン)


※ネタバレはないように書いてます。

天使と悪魔 (上) (角川文庫)

天使と悪魔 (上) (角川文庫)


世界的なベストセラーとなった『ダ・ヴィンチ・コード』に続くダン・ブラウンの『天使と悪魔』を、今日読み終えた。
この作品は、『ダ・ヴィンチ・コード』の前作にあたり、2000年に米国で出版されたもの。
いわゆるラングドン・シリーズの第一弾として出版されたものだ。
日本でも2003年に角川書店から邦訳が出たが、ほとんど話題に上らなかったのだろう。
1ヶ月前に文庫版が出たばかりだが、すでに三版まで出ている。
こちらの方も、前作に劣らず睡眠不足にさせてくれる小説だ。
とにかく面白い…という言葉を使っていいものかどうか…。
世界中を震撼させる大事件が読者の前に待ち受けている。
前作に続いてまた、手に汗握るハラハラドキドキの生活が数日間続くことになる。
もう他のことが手につかなくなる。


天使と悪魔 (中) (角川文庫)

天使と悪魔 (中) (角川文庫)

天使と悪魔 (下) (角川文庫)

天使と悪魔 (下) (角川文庫)

ちょっとだけ…

ネタバレなしといっても、文庫本の背表紙に書かれた筋書きの範囲程度のことは書いても許されるだろう。
舞台はヴァチカン。
しかも、数十年に一度のコンクラーヴェ教皇選挙)の場だ。
カトリック陣営に対抗するのは、歴史的に名がしれた某秘密結社。


この小説、『ダ・ヴィンチ・コード』とかなり共通するパターンに当てはめて書かれた要素が多々あり、そこが非難を浴びているところだ。
というか、実際は逆で、2003年に出た『ダ・ヴィンチ』の方が『天使と悪魔』の二番煎じ的だということだ。
冒頭からいきなり事件現場から始まり、ゾッとするようなものが発見される。


そして図象学者ロバート・ラングドンが呼ばれ、被害者の娘と二人で事件の解決に向けて奔走することになる。
最初に事件が起きるのはスイス。
世界にとって取り返しのつかない偉大な財産が失われようとするまで、残された時間は24時間。
小説が時を告げるたびに、読者のハラハラ感は募っていく。


前述のような背景があるため、上巻を半分ぐらい読んだところで、「あ、こいつが犯人だな」とわかってしまった。
ダ・ヴィンチ・コード』と同様な、思いもつかないようなドンデン返しが待ち受けていた。
…と思い込んでいた。
最期の下巻の半分ぐらいまで読み進むまでは。
だが、ブラウンは上手を行っていた。
ドンデン返しの、そのまたドンデン返しがあったのだ。
真犯人の予測ははずれてしまい、予想もしなかった人物だった。
しかも事態は二転三転して、読者の誰もが思いもつかなかったような結末に。

ダ・ヴィンチか天使か

ある本の調査によれば、5人に一人は『ダ・ヴィンチ』よりも『天使と悪魔』の方が面白かったと思うという。
その中に、私も入るだろう。
こちらの方がドキドキ感が何度もあり、夜中に寝床の中で読んでいて、まったく眠気が模様してこなくて困ったものだった。
こちらの作品の方が、スケールが壮大だと思う。
科学と宗教
信仰と狂気
暴力と人類愛
このような対立的な概念が、じつは表裏一体であることをわれわれに考えさせるようになる。


なぜもっと話題にならなかったのだろうか。
時機を逸してしまったのか。
『天使と悪魔(ANGELS AND DEMONS)』というタイトル自体、この作品のスケールの大きさからいうと、ちょっと地味すぎるかもしれない。
ダ・ヴィンチ・コード』の方は、原書のタイトルをそのまま使ったのが正解だっただろう。
「どんな本だろう…」と書店で手に取らせる何かを持っているのではないか。


こちらの作品の方が、『ダ・ヴィンチ』よりも映画向きかもしれない。
インディージョーンズばりのアクションが見られることだろう。
映画については、『ダ・ヴィンチ』よりもこちらの方を見てみたい気がする。
監督となる人物が、この作品を台無しにせずに面白く作ってくれたらの話だが。

作品としての評価

ダ・ヴィンチ・コード』の事実上の「下書き」などとも言われるが、たしかに第二弾の方が作品としての完成度は高いだろう。
『天使と悪魔』の方は、読み終えるまでは手に汗握って作品の世界にのめり込んで行く。
だが、終わってみると「あれ、あのことはどうなったんだろう…」と、疑問に残ることがいろいろと出てくるのだ。
ストーリー的に不完全というか、筋に強引さがあるというか。
だが、そういうことを差し引いても、とにかく面白い。
個人的には、『ダ・ヴィンチ』よりも楽しめた。
また、「神とは、信仰とは何か」といった深遠な思索へわれわれを導いてくれるような、壮大さと奥深さをもっているのではないか。
また、この作品を読むと、欧米では歴史を通じて宗教(カトリック)と科学の対立がどれだけ深いものであるかがよくわかって面白い。
この作品は『ダ・ヴィンチ』ほど批判の対象となるボロが出ていないようだが、それは単に『ダ・ヴィンチ』ほど多くの批判本が出ていないだけという話かもしれない。
たとえば、この小説で重要なテーマとなっている「反物質」。
これは、実際に作品の舞台となっているCERN(ヨーロッパ素粒子物理学研究所)で、1995年に陽電子反陽子からなる反水素が生成されている。
また『天使と悪魔』刊行後の2002年には、CERNと日本の研究チームが、反水素の5万個ほどの大量生成に成功している。
これが期待されているように貴重なエネルギー源になり得るものならば人類にとって朗報だが、ブラウンが描くように脅威的な「武器」ともなるのだろうか…。

次作『ソロモンの鍵

私の心は、すでにブラウンの次作に飛んで行っている。
だが、今年後半に出る予定が、ブラウンの執筆の遅れにより、来年にずれ込みそうだという。
次はかなり期待できる。
なんといっても、舞台はアメリカ。ワシントンDC。
そして、主題はフリーメイソンリーだ。
その内容については、グレグ・テイラー著の『「ダ・ヴィンチ・コードイン・アメリカ』で、かなりの部分がバラされてしまっている。
というか、実際にはまだ出ていないのに本当にどこまで「バラした」かどうかはわからないのだが、そう思わされてしまうほど、この著者の魔術や秘密結社への造詣と推理力は深いものがあるということだ。
しかも、この本は、ブラウンの著作の予言だけで終わっていない。
米国がフリーメイソンらによって建国された国家であることの動かざる「証拠」を、われわれに叩きつけてくれるのだ。
ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』によってブラウンワールドのとりこになってしまった人には、お奨めの本だ。

「ダ・ヴィンチ・コード」イン・アメリカ――「ソロモンの鍵」解読ガイド

「ダ・ヴィンチ・コード」イン・アメリカ――「ソロモンの鍵」解読ガイド


フリーメイソンリーによって建国されたといっても過言でないメイソン国家であるアメリカを舞台として、ダン・ブラウンはどのような世界をわれわれに見せてくれるのだろうか。


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